人と比べてしまうのは、なぜ?
SNSを開くと、楽しそうな旅行の写真や仕事での成功、家族との幸せそうな日常が目に入ります。
友人から結婚や出産、昇進の報告を受けることもあるでしょう。
「よかったね」と思う一方で、ふと自分の生活と比べてしまう。
「私は何をしているんだろう」
「みんな前に進んでいるのに、自分だけ取り残されている気がする」
そんな経験はありませんか?
実は、人と自分を比べることには、心理学的な理由があります。
今回は、人と比較してしまう心の仕組みと、比較によって苦しくなったときの対処法を紹介します。
社会的比較理論とは?
1954年、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーは「社会的比較理論」を提唱しました。
人には、自分の能力や考え方を評価しようとする傾向があります。
しかし、自分がどの程度できているのか、客観的な基準がないことも少なくありません。
そんなとき、人は他者を参考にして自分を評価しようとします。
例えば、
- 同年代の人と収入を比べる
- 友人の家庭と自分の家庭を比べる
- 同僚の仕事ぶりと自分を比べる
- SNSで見る他人の生活と自分の日常を比べる
このように、他人との比較は、自分の立ち位置を確認するための自然な心理的働きでもあるのです。
つまり、人と比べてしまうこと自体が、悪いわけではありません。
比較には2つの方向がある
社会的比較は、比較する相手によって大きく2つに分けられます。
① 上方比較:自分より優れていると感じる人と比べる
自分より成功している人や、恵まれていると感じる人と比較することです。
例えば、同年代の友人が仕事で活躍している姿を見て、「私も頑張ろう」と刺激を受けることがあります。
一方で、「それに比べて私は……」と自信を失ってしまうこともあります。
上方比較は、向上心につながる場合もあれば、劣等感につながる場合もあるのです。
② 下方比較:自分より大変そうだと感じる人と比べる
自分より困難な状況にいると感じる人と比較することです。
「自分はまだ恵まれている方かもしれない」
そう考えることで、安心感を得られる場合があります。
ただし、他人の苦労と比べて自分のつらさを否定してしまうこともあります。
「もっと大変な人がいるんだから、弱音を吐いてはいけない」
そう考える必要はありません。
つらさは、誰かと比べて決めるものではないからです。
SNSでは、なぜ比較が起こりやすい?
SNSには、日常の中でも特に印象的な出来事が投稿されやすい傾向があります。
旅行、結婚、出産、昇進、おしゃれな食事。
もちろん、それらは投稿した人にとって大切な出来事でしょう。
しかし、私たちが目にしているのは、その人の生活の一部分です。
その裏側にある悩みや苦労までは、画面から見えないこともあります。
それでも私たちは、他人の生活の一部分と、自分の生活のすべてを比較してしまうことがあります。
SNSを見たあとに気分が落ち込む場合は、こうした比較が影響しているかもしれません。
人と比べて苦しくなったときの対処法
① 比較している自分に気づく
まずは、自分が誰かと比較していることに気づいてみましょう。
「今、私は友人と自分を比べているんだな」
それだけでも、自分の気持ちを少し客観的に捉えるきっかけになります。
無理に比較をやめようとする必要はありません。
② 比較の基準を変えてみる
他人ではなく、過去の自分と比較する方法もあります。
例えば、
「去年より、自分の気持ちを伝えられるようになった」
「以前より、無理な誘いを断れるようになった」
「少しずつ、自分の時間を大切にできるようになった」
大きな成果でなくても構いません。
自分なりの変化に目を向けてみましょう。
③ 自分が大切にしたいものを考える
他人が手に入れたものと、自分が本当に望んでいるものは、必ずしも同じではありません。
仕事での成功を大切にする人もいれば、家族との時間や自由な暮らしを大切にする人もいます。
心理学では、自分にとって大切な方向性を明確にすることを「価値の明確化」と呼ぶことがあります。
これは、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)などでも用いられる考え方です。
「私は、どんな毎日を送りたいのだろう?」
他人の人生ではなく、自分の価値観に目を向けることが大切です。
④ SNSから少し距離を置く
SNSを見るたびに気分が落ち込むなら、利用する時間や頻度を調整してみるのも一つの方法です。
例えば、寝る前は見ない、特定のアカウントを一時的にミュートするなど。
SNSそのものが悪いわけではありません。
自分の心の状態に合わせて、付き合い方を選んでみましょう。
人生の進み方は、人それぞれ
年齢を重ねるにつれて、人生の形はますます多様になります。
結婚する人、独身で暮らす人。
子どもを育てる人、子どもを持たない人。
仕事に打ち込む人、新しい挑戦を始める人。
親の介護をする人、自分自身の健康と向き合う人。
同じ年齢でも、置かれている環境や大切にしているものは違います。
それなのに、私たちは時々「この年齢なら、こうあるべき」という基準で、自分を評価してしまいます。
でも、人生には全員に共通する正解や、決められた進行表があるわけではありません。
誰かの人生が順調に見えたとしても、それが自分にとっての幸せとは限らないのです。
まとめ|比べることより、自分の人生に目を向ける
人と比較することは、人間に備わった自然な心理的傾向です。
比較によって刺激を受けたり、自分の成長に気づいたりすることもあります。
大切なのは、比較すること自体を否定するのではなく、その比較が自分にどのような影響を与えているかを知ることです。
誰かを羨ましく思う日があってもいい。
自分だけ取り残されたように感じる日があってもいい。
そんなときは、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
「私は、本当はどんな人生を送りたいのだろう?」
他人の人生を基準にするのではなく、自分が大切にしたいものを見つけていく。
それも、自分らしく生きるための一歩なのかもしれません。
参考文献
- Festinger, L. (1954). A Theory of Social Comparison Processes. Human Relations, 7(2), 117–140. https://doi.org/10.1177/001872675400700202
- Wills, T. A. (1981). Downward Comparison Principles in Social Psychology. Psychological Bulletin, 90(2), 245–271. https://doi.org/10.1037/0033-2909.90.2.245
- Vogel, E. A., et al. (2014). Social Comparison, Social Media, and Self-Esteem. Psychology of Popular Media Culture, 3(4), 206–222. https://doi.org/10.1037/ppm0000047
